夏目漱石『行人』

igadarui2011-02-18

農作業が中止になって、半ドンになった日、
漫画も雑誌も読む気がしない時、目に付いたのがこれだった。
おれは幾度と無くこの本を読んでいる。
その為『行人』の本はボロボロになっている。
おれ個人としては、『こころ』より『行人』の方が好きになっている。何故ならば、後期三部作の中で、一番ドラマとして人物が動いている部分と、主人公の苦悩が語られる部分とのバランスが良く取れているからではないかと思う。

行人 (新潮文庫)

行人 (新潮文庫)

夏目漱石の、いわゆる「後期三部作」と云われる作品の2作品目。
主人公の一郎を、弟二郎の目から眺めた、主人公の内部が一切描かれていない物語となっている。
一郎は、嫁の直を信じられない。いわゆる「精神(スピリット)」を掴みたくて仕様が無い。その為一人で苦しみ苦しみ苦しむ毎日を送る。そのような一郎に、二郎をはじめ家族は彼を避けるようになる。
後半、一郎が友人のHという人と旅行に行き、Hから相当数の長い手紙が二郎に届けられ、Hから見た一郎の苦悩を描いて終わる。それまでの二郎の婚約話や、一郎夫婦のその後、そして家族の物語を放棄したかたちによって物語は終わる。
このやりかたは、『こころ』でも受け継がれる。