安部公房『終わりし道の標べに』

終りし道の標べに (講談社文芸文庫)

終りし道の標べに (講談社文芸文庫)

安部公房の初期の初期のそのまた初期の長編小説。
終戦直後の日本。『かく在る』とはどういうことかを求めて、満州の果てに倒れんとしている主人公T。故郷から、徴兵から逃れるために、彼は満州までやってきた。
そこにあるはずのない『秘密』の招待を巡って匪賊や八路軍などを交えた対立に巻き込まれる。 
安部公房といえば、『箱男』や『砂の女』といった、「ある時当然のようにあるはずの物(名前、妻、故郷)が突如なくなってしまったら」といった感じの話が多いのだが、この作品は観念的な作品。だからいつもの安部公房作品を期待して読むと、ちいと分かり辛くなる。